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大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業=ビジョナリー・カンパニーに学ぶ

十二の崩れた神話

下記は、ビジョナリー・カンパニーに対する誤解。

  1. すばらしいアイデアが必要である
    → 設立当初から成功したビジョナリー・カンパニーは他社よりかなり低い
  2. ビジョンを持った偉大なカリスマ的指導者が必要である
    → カリスマ的指導者はまったく必要ない
  3. 利益の追求を最大の目的にしている
    → 利益追求以上に、基本的価値観や目的といった基本理念を大切にしている
  4. 「正しい」基本的価値観がある
    → 「正しい」かではなく「信じて」いるか
  5. 基本理念を時代に合わせて変え続ける
    → 基本的価値観は信仰に近いほどの情熱を持って維持する
  6. 危険を冒さない
    → 社運を賭けた大胆な目標に挑むことを恐れない
  7. だれにとってもすばらしい職場である
    → 基本理念と高い要求にピッタリと「合う」者にとってだけすばらしい職場
  8. 緻密で複雑な戦略を立てて、最善の動きをとる
    → あとから見れば、先見の明があるようでも、実際は大量のテストからうまくいったものを残している
  9. 根本的な変化を促すには、社外からCEOを迎えるべき
    → 変化と斬新なアイデアは社内からしか生まれないという常識は崩されている
  10. 競争に勝つことを第一に考えている
    → 自らに勝つことを第一に考えている
  11. 二つの相反することは、同時に獲得できない
    → 「ORの抑圧」ではなく「ANDの才能」を大切にする
  12. 経営者が先見的な発言をしている
    → ビジョン、価値観、目的、使命、理念などは、基本理念を活かすための一歩にすぎない

時を告げるのではなく、時計をつくる

日夜どんなときでも正確な日時を言える人に会ったとして。その人物(=カリスマ的指導者)はすばらしい才能の持ち主で尊敬されても、その人物がこの世を去ったのちも、永遠に時を告げる時計をつくったとすれば、もっと驚くべきこと。つまり、製品についてのビジョンではなく、組織についてのビジョンを考え、基本的な過程、基礎になるダイナミクスを組織に深く根付くような性格を考えるべき。

「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かす

相反する考え方が存在した場合、どちらかを選択したり、両者のバランスをとるのではない、どんなときも共存させる。「一流の知性と言えるかどうかは、二つの相反する考え方を同時に受け入れながら、それぞれの機能を発揮させる能力があるかどうかで判断される」
現実的な理想主義。

利益を超えて

利益を上げることが目的ではない。目的は、顧客が判断し、誇りにできる仕事をしているかどうかで決まる。その結果として利益が上がる。
顧客への奉仕が第一で、従業員と経営陣への奉仕がその次で、株主への奉仕は最後で、これが行われていれば利益が上がる。

理念は「内容」より「本物」かが重要

理念はその企業の社員でない限り重要ではない。企業が「正しい」基本理念や「好ましい」基本理念を持っているかではなく、企業が、基本理念を持っており、社員の指針となり、活力を与えているかどうかが重要。

何を信じるのかではなく、どこまで深く信じているか、組織がどこまで理念を貫き通しているかが重要。

基本理念を公言すること自体で、その理念に従って一貫した行動をとる傾向が強まる。そして宣言するだけでなく組織全体に浸透させる。

本物の基本的価値観なのかを見極める方法

基本的価値観は鋭く短い言葉に凝縮され、大切な指針になっている。大抵は3〜5つ。
それによって、外部の環境が変わっても、たとえ、これらの価値観が利益に結び付かなくなり、逆に、それによって不利益を被るようになったとしても、百年間にわたって守り続けていくべきものはどれか。逆に、これらの価値観を掲げていては不利になる環境になった場合に、変更でき、捨てされるものはどれか。

書籍内で紹介されていた実際のビジョナリー・カンパニーの基本理念も参考になるので書き残しておく。
ビジョナリー・カンパニーの基本理念

基本理念を維持し、進歩を促す

ビジョナリー・カンパニーは目的を追い続けるが、目的を完全に達成することはあり得ない。ウォルト・ディズニーが本質をつく発言をしている。「想像力がこの世からなくならない限り、ディズニーランドが完成することは絶対にない」。

基本理念を、文化、戦略、戦術、計画、方針などと混同しないことが何より重要。むしろこれらは変わらなければならない。基本理念だけは変えてはならない。

「子供向けのアニメをつくることにある」と宣言しない。これは最悪の目的だ。「想像力を活かして、人々を幸せにする」という目的であれば、説得力があり、優に百年は続く。

世界は変化している。この難題に組織が対応するには、企業として前進しながら、信念以外のすべてを変える覚悟で臨まなければならない。組織にとっての聖域は、その基礎となる経営理念だけだと考えるべき。

進歩への意欲があれば、いまがどんなに順調であっても、決して満足しない。進歩を求めるのは内部の力で、外部の理由を必要としない。

基本理念と進歩の相互作用は、とくに重要

基本理念を維持し、進歩を促すことが重要。「ANDの才能」を活かす。

基本理念進歩への意欲
継続性と安定性不断の変化
揺るぎない土台絶えず前進
理念の内容に制限企業の可能性の幅を広げる
明確理念に沿う限り、どのような進歩でも構わない
保守的革命的

企業が意図を持つのはいいことだが、その意図を具体的な行動に移せるかどうか、アメとムチを組み合わせた仕組みをつくれるかどうかが重要。

維持すべき基本理念 進歩への意欲
ボーイング 航空技術の最先端に位置する。パイオニアになる。リスクをとる。 B-17、707、747に社運を賭ける。
IBM すべての事業で最優秀を目指す。顧客を満足させるためには時を惜しまない。 360に50億ドルの開発費をかける。顧客の新しいニーズにこたえる。
フォード 自動車、とくに庶民のための自動車をつくる。 自動車を大衆の手に。
モトローラ 「社内の潜在的な創造力」を活用する。若返り。不断の改善。偉大な製品によって社会に貢献する。 179.95ドルのテレビを10万台売る方法を考える。シックス・ シグマの品質基準を達成する。品質管理のボルドリッジ賞を獲得する。イリジウム計画を進める。
フィリップ・モリス 勝利する-トップ企業になり、他社を打ち破る。個人の選択の自由は守るに値する。 タバコに対する社会的圧力があるなかで、業界の巨人を打ち倒し、タバコ業界のトップになる。
ソニー 日本の文化と地位を高める。開拓者であり、人が避けて通る仕事に取り組む。 低品質という海外での日本製品のイメージを変える。ポケ ッタブル・トランジスター・ラジオを開発する。
ディズニー 人々を幸せにする。細部にあくまでもこだわる。創造力、夢、発想。 ディズニーランドを建設する。それも、業界の標準に従 ってではなく、自分たちのイメージに従って建設する。
メルク 人々の生命を維持し、生活を改善する。医薬品は患者のためにあり、利益のためではない。創造力と革新。 研究開発への巨額の投資と病気を治療する新薬によって、世界的に傑出した製薬会社になる。

組織を分析する指針

  • 時を告げる預言者から時計をつくる設計者へと、発想を転換しているか
  • 「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かしているか
  • 進歩への意欲があるか。基本理念以外のすべてを変化させ、前進させようとする本能に近い衝動があるか
  • 社運を賭けた大胆な目標、生え抜きの経営陣など、具体的な手法を使って、基本理念を維持し、進歩を促しているか
  • 組織は一貫性を持っているか。社員が一貫したシグナルを受け取り、基本理念を支え、目標どおりの進歩を遂げる環境が強化されているか

明確で説得力のある目標

重要なのは指導者ではなく、目標。目標それ自体が、進歩を促す。
また、目標があれば進歩を促せるわけではなく、その目標を達成する決意がきわめて硬い場合だけ機能する。

人々の意欲を引き出す目標。人々の心に訴え、心を動かす。具体的で、わくわくさせられ、焦点が絞られている。誰でもすぐに理解でき、くどくど説明する必要はない。
説得力があり、進歩を促す可能性が高いものであることがポイント。

この目標が有益なのは、それが達成されていない間のみ。目標を達成したとき、次の目標を設定しないと自己満足による無気力状態に陥るので注意しなければならない。

将来にわたって大胆な新目標を次々に設定していく能力があるか、が重要となる。

  • 明確で説得力があり、説明する必要もないほどか?
  • 組織内に活力がみなぎるか?
  • 気楽に達成できるものではなく、努力と運が必要だと思えるなんとか達成できる内容か?
  • きわめて大胆で、それ自体が興奮を呼び起こすものか?
  • 組織の指導者が変わっても継続し続けられるか?
  • 基本理念に沿ったものか?

目標を達成する手段

組織の力に頼る。後継者の育成と組織構造の強化。方向はどうであれ、いつも目標を決めておくべき。

カルトのような文化

ビジョナリー・カンパニーは自分たちの性格、存在意義、達成すべきことをはっきりさせているので、自社の厳しい基準に合わない社員や合わせようとしない社員が働ける余地は少なくなる傾向がある。

ビジョナリー・カンパニーの特徴として、理念への熱狂、教化への努力、同質性の追求、エリート主義、がある。

基本理念を熱心に維持するしっかりした仕組みを持った組織をつくることが大事であり、決して個人崇拝のカルトをつくるべきだということではない。

第2の進歩

目標が進歩を促すのとは別に、進化による進歩を積極的に促している。
進化による進歩は、目標があいまいで、予想外の小さな一歩からはじまる。

ビジョナリー・カンパニーは、賢明な洞察力と戦略的な計画の結果と考えるより、多数の実験を行い、機会をうまくとらえ、うまくいったもの(そして、基本理念に適合するもの)を残し、うまく行かなかったものを手直しするか捨てるという過程の結果。

進化による進歩を促すための5つの教訓

  1. 試してみよう。なるべく早く
  2. 誤りは必ずあることを認める
  3. 小さな一歩を踏み出す
  4. 社員に必要なだけの自由を与えよう
  5. 重要なのは仕組みである。着実に時を刻む時計をつくるべき

決して満足しない

ビジョナリー・カンパニーでもっとも大切な問いは、「明日にはどうすれば、今日よりうまくやれるのか」である。
「どこまでうまくいっているのか」「どうすればもっとうまくやれるか」「競争に対応するために、どこまでやらなければならないか」ではない。
安心感は目標ではない。むしろ不安感をつくり出し、自己満足に陥らないようにし、それによって外部の世界に強いられる前に変化し、改善するよう促す強力な仕組みを設けている。
また、50年先の長期的な成功を目指しながら、同時に、短期的な業績についても高い基準を掲げている。

ビジョナリー・カンパニーの真髄

ビジョナリー・カンパニーの真髄は、基本理念と進歩への意欲を、組織の隅々までにまで浸透させていること。
目標、戦略、方針、過程、企業文化、経営陣の行動、オフィス・レイアウト、給与体系、会計システム、職務計画など、企業の動きのすべてに浸透させていること。

そして、基本理念を維持し、進歩を促すように、すべての要素に一貫性がとれた組織でなければならない。

ビジネスに活かす4つの教訓

  1. 時を告げる預言者になるな。時計をつくる設計者になれ
  2. 「ANDの才能」を重視しよう
  3. 基本理念を維持し、進歩を促す
  4. 一貫性を追求しよう

さらに続編、ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則、についても軽く備忘録として書き残す。

飛躍の法則

準備規律ある人材第五水準のリーダーシップ
最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
規律ある考え厳しい現実を直視する
突破針鼠の概念
規律ある行動規律の文化
促進剤としての技術

第五水準のリーダーシップには「職業人としての意志の強さ」と「個人としての謙虚さ」を二面性を合わせ持っている。

針鼠の概念とは、本質を見抜き、本質以外の点を無視する。複雑な世界を一つの系統だった考え、基本原理、基本概念によって単純化し、これですべてをまとめ、すべての行動を決定している。
3つの側面、「情熱を持って取り組めるもの」「自社が世界一になれる部分」「経済的原動力になるもの」を深く理解し、単純で明快な概念にまとめ、その概念をすべての活動の指針にしている。