行動経済学

アンダーマイニング効果

自分が好きでしていた行動(内発的動機)に、 報酬(外発的動機)を与えられることによって、やる気がなくなってしまう現象のこと。
アンダーマインイング:土台を壊す・弱体化させる

感応度逓減(ていげん)性

全体の母数の大きさによって、 同じ金額を大切に扱ったり邪険にしたり勝手にその価値を変えてしまう心の動き。
例)同じ300円の値引きでも、100,000円が99,700円より1,000円が700円の方がお得に感じる。

フレーミング効果

同じ情報でも 言い方を変えると異なる印象を 与えてしまう現象。
私たちは、目の前にあるものだけで 直感的に判断してしまう傾向があるため、 実は同じということに気づかず、 提示の仕方によって 印象を変えてしまうことがある。

社会を成立させているのは、モラルかお金か

例)遅刻をなんとかするために、 超過料金制度、言い換えると ある種の罰金制度を導入。しかし、その制度の導入が 「お金を払えば遅れても大丈夫」という意識の変化を引き起こしてしまいました。つまり、罰金を導入する前は、遅刻を「申し訳ない」と思う社会的なモラルがあったが、「罰金」という具体的なペナルティが提示されたことで、その意識が消滅してしまった。

ハロー効果

勤めている会社や出身校が有名だというだけで人物を高く評価してしまうことがあるように、自分が評価しているものも、その内容を理解した上でなく、実はただ目立つ特徴だけで評価していたということが、ある。

メンタル・アカウンティング

無意識のうちに、入手方法や状況に応じて本来の金銭的価値とは異なる独自の優先順位を付けることがある心の働き。

アンカリング効果

同じ価格の同じ商品でも基準となる情報に左右されて価値の大小を非合理に判断してしまうこと。
例)20,000円が12,000円と15,000円が12,000円のような場合、割引率が高い方を選択してしまいがち。

代表性ヒューリスティック

様々な物事を見聞きした時に、既に抱いているイメージに囚われて偏った判断をしてしまうこと。

おとり効果

1つでは価値が決められなかった物でも、おとりとして新しい選択肢が追加された途端、買うか買わないかから、どちらの選択肢が良いかという問題に置き換わってしまうことがある。

新近効果

私たちには、複数の情報を順番に提示された時に、後に提示された方を印象強く評価してしまう「新近効果」と呼ばれる心理現象がある。
そのため、同じ情報でもネガティブなことを最後に言うと相手はネガティブな印象を持ち、ポジティブなことを最後に言うと相手はポジティブな印象を抱く傾向がある。

極端回避性

私たちは、3段階の選択肢を提示されると 一番上や下という極端な選択を回避してできるだけ無難な選択、つまり真ん中の選択肢を選ぼうとする傾向がある。
そのため、最初は「高い」と言って避けていた金額でも選択肢が変わることでガラリと評価が変わってしまうことがある。

保有効果

私たちには、一度でも自分が 保有してしまうと、 実際のその物の価値よりも高い価値を作り出してしまう傾向がある。
そのため、客観的には全く同じような価値の物を交換する場合でも自分が持っていた物を手放すことが、大きな損失のように感じてしまうことがある。

プライミング効果

私たちは、事前に与えられる情報によって、同じものを見ても、解釈がガラリと変わってしまうことがある。

上昇選好

私たちの心には「上昇選好」と呼ばれる、だんだん良くなる方を好む、心理傾向がある。
そのため、最終的にもらえる報酬が同じだったとしても、 毎日同じ報酬をもらうより、 最初は少ないけれど毎日報酬が増えていく方が、より明日を楽しみに、仕事をするようになる。

目標勾配(こうばい)仮説

私たちはゴールに近づくほどモチベーションが高くなったり動きが早くなるなど、 特別な行動を見せることがある。

同調行動

私たちは、集団とは異なる価値判断をした時に、 集団の意見が明らかに間違っていたとしてもみんなの意見に合わせて、自分の意見を歪めてしまうことがある。

認知的不協和の解消

希望が叶えられない時に生まれる心の中の不快感を心理学では 「認知的不協和」と呼んでいる。
私たちは自分の心に湧き起こる不協和を解消するために、時折心にもなかった言動をして心のバランスを取ろうとすることがある。

損失回避の法則

私たちは目の前の損をとにかく避けたいという気持ちが強い。

参照点依存性

私たちは、何か物事を評価する際、 その物事の絶対的な価値ではなく、 基準となる状態 (参照点)との相対的な比較によって 価値を決めてしまうことがある。
そのため、同じものでも参照点が変わると、 価値が全く変わってしまうことがある。

無料による選好の逆転

私たちは、合理的に考えればこれ以上出費すべきではない状況にもかかわらず、 一度「無料」という言葉を見せられてしまうとたとえ合計金額が上がったとしても、「どうせ必要なものだから」等と、様々な理由を付けて、なりふり構わずに「無料」になるための選択肢を選んでしまうという心理傾向がある。
世の中に「無料」と書かれたものが多いのは、 こういった人間の心理傾向があることも理由の一つ。

プラセボ効果

何の効果や変化も無いものでも、効果があると偽ったり、高い値付けをすることによって、正当性を感じさせて信じ込ませることで、 実際の感覚にまで影響を及ぼしてしまうことがある。

双曲割引

近い将来の変化の方が、 遠い将来の変化に比べて大きいと感じてしまう心理傾向のこと。これは時間や親密さ、物理的な距離に関しても、双曲割引 同じような効果が働いてしまうことがある。

例)今、1万円を貰う方がいいか、1年後に1万円と 1000円を貰う方がいいかと聞かれたら、今貰う方を選ぶ方が多い。
例)今からの一週間と1年後の一週間では、今からの一週間の方が長いと感じる

サンク・コスト(埋没費用)効果

採算の合わない事業に対して、今後どうすべきかという意 思決定をする際、これまで支払ってきたお金や時間、労力 のことを気にするあまり、既に使ってしまった費用(サンク・ コスト)に引きずられてずるずると非合理的な決定をしてしまうこと。
例)オークションも良例

デフォルト効果

私たちは、最初から設定されているデフォルトの状態、いわゆる「初期値」というものに、選択が左右されてしまうことがしばしばある。

フォールス・コンセンサス効果

自分の意見を一般的で適切なものであるとし、それ以外の判断をする人を非常識な人だと思い込んで しまうこと。

ピーク・エンドの法則

私たちは、過去のある体験を思い出す時に、その体験の中で最も印象の強い瞬間と最後の終わった瞬間の印象を、平 均してしまうこと。

例)歯医者に行って治療をしてもらう時に、すごく苦痛を感じた直後に治療を終える場合と、同じようにすごく苦痛を感じた治療の後に痛みの少ない治療をしてから終えるのとでは、後者のほうが治療時間が長いのにもかかわらず、 苦痛の印象が和らぐことがある。

確実性効果

私たちは、完璧さに対して過剰に反応するあまり、費用対効果を無視して100%にすることに固執してしまう心のはたらき。

ほとんど完璧に近いものから不備を見つけ出し、さらに完璧(100%)に近づけることは、そうでない場合に比べて大変な労力を要する。しかし、実際の社会では、かなり高い市場シェアを自社製品が持っているにも拘わらず、その上の完璧の状態(100%)を目指すあまり、多額の投資をその上にしてしまうといったことが多々ある。冷静に考えれば、まだ未開拓の新しい市場に投資した方が、より少ないコストで成長が見込める可能性が高い。

確証バイアス

私たちは通常、まず直感で正しそうな答えを発見すると、その答えに飛びつき、さらには固執し別の答えの可能性を頭から排除してしまうこと。私たちの日々の判断に強い影響を及ぼすことがある。

決定回避の法則

多数の選択肢を持つことは、一見、自由さの象徴のように思えるが、実際には多すぎる選択肢が生む迷いや戸惑い が、決断を遠ざけてしまうことがある。

少数の法則

少ないサンプルによる偏っ た結果を、何故か正しいと思い込んでしまうことがある心理的傾向。
例) 「例えば、コインを投げて表か裏どちらが現れるかを当てる ゲームをするとします。もちろん、確率的には裏も表も2分 の1の確率で出るコインです。これまで「裏・裏・裏・裏・裏」 と裏が5回連続で出たとします。 次に表と裏、どちらが出ると思ううか。多くの人は、感覚的に「そろそろ次は表が出るかも」と推測 したり、あるいは「このコインは裏が出やすいコインだ」と思 ってしまう。たった5回の試行で、そのように判断して しまうのです。しかし、コインの表と裏どちらが出るかは常 に2分の1の確率で、直前の結果が次の結果に影響を及ぼす ことはありません。私たちは、このようにわずかな前例だけ で、偏った判断をしてしまう。

プロスペクト理論

この理論は、様々な行動経済学の考え方の基盤となっていて、「価値関数」と「確率加重関数」という2つの考え方によって構成されている。
私たちは同じ量の得と損を比較した時に、損の方を約2倍も重大に感じてしまう傾向がある。
一方の「確率加重関数」とは、発生する確率によってリス クを回避するか積極的に追求するか変化してしまうという考え方。本来、確率というものは 30%であれば 30%以上でも以下 でも無い、客観的なものだが、利得と損失が関わる状況になると、主観的な評価が入り非合理的な判断をしてしまうことがある。

利用可能性ヒューリスティック

ある物事が起きる可能性を判断する際に、たまたま自分がそれ以前に見聞きして頭に思い浮かべやすかった事柄に影響されることがある。このように自分が思い出しやすい記憶、言い換えると、利用可能な記憶による直感や印象だけで物事を歪んで判断してしまうこと。
ヒューリスティック:直感的判断

ナッジ

行動経済学者リチャード・セイラーは、行動経済学によって得られた知見は、普段の生活の中で、非合理的な行動を起こしそうな時に、私たちをナッジ (注意をひくために、人を肘でそっと小突いて知らせる) するためのものになっ ていくべきだという考え方を示している。

今後、行動経済学は、研究がさらに進むことによって、お金儲けのノウハウだけでなく、ストレスや不正、非合理的な損といった、私たちの心が生み出していた見えない問題を解決し、より良い社会を作るために活用されていくと思われる。

というわけで、列記してきたが、久しぶりに振り返りもできてよかった。
行動経済学がより良い社会を作るために活用されることを期待して。