スタバに学ぶ。

書籍「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」を読んだときにメモしたノートが出てきた。3, 4年前に読んだ本。2014年に発行された本ではあるが、ノートを読み返して、今でも激しく同意する。そこで、ノートを処分する前にWeb化することにした。
Withコロナで、実際のアクションが通じない部分もあるが、マインドは今後も普遍と響くことと思う。

本書は三部構成となっている。それにならってまとめてみる。

  • A. マーケティング・ブランディングに学ぶ
  • B. スターバックスのサービスに学ぶ
  • C. スターバックスの人材育成

A. マーケティング・ブランディングに学ぶ

イメージキャンペーンを展開してブランドを確立しようとするのではなく、商品の性能やカスタマーエクスペリエンスを向上させることに注力する。
つまり、ビジネスを築いていくうちに、ブランドは生まれる

商品に対する情熱を一つひとつの活動に組み込む。
品質に対する妥協を許さない情熱が、他社をリードし、熱烈なファンの指示を得る。

  • 店舗でのエクスペリエンス
    「どこにでもあるもの」を「他にはないもの」に変えるには、デメリットよりメリットのほうがはるかに大きくあるべきで、徹頭徹尾のこだわりが必要。
    ありがちなのは、妥協点を見つけて落ち着いてしまうことであるが、これは良くない(書籍「ビジョナリー・カンパニー」の「ORの抑圧 VS ANDの才能」でも言及されている)。
  • テイスティングサービスでお客様と交流する
    商品やサービスに愛着を持っているなら、そこには人を惹きつけてやまない魅力と、素直に素晴らしいと感じて、興味を持てるような理由があるはず。その熱い思いをそのまま伝える
  • 地域密着(口コミに宣伝は必要不可欠)
    お客様、従業員(パート)、地域、社内外問わず、人々のための活動を実践する。結果、共通の認識が生まれ、企業理念に賛同し、熱烈に指示したいと思ってくれる素晴らしい人たちを惹きつける好循環が生まれる。

このように、ブランド・マネジメントは「評判管理」と捉える。
顧客が実際に気に止めるのは、新しいブランドではなく新しいカテゴリー

カテゴリーを広めるための3つのミッション

  • そのカテゴリーはどんなものか(うんちく)
  • そのカテゴリーの特徴(テイスティング)
  • そのカテゴリーが目指すこと

価格重視の企業に転じれば、独自の商品やカスタマーエクスペリエンスは提供できなくなる。

売り上げを伸ばす方法は3つのみ

1. 新規顧客を獲得する

知るきっかけ

  • 近所 or 職場近くのスタバのオープニングイベントで
  • 地域サービスのテイスティングサービスで
  • スタバの良さを熱く語る友人から聞いて
  • 好きな芸能人がスタバのロゴ入りカップでコーヒーを飲んでいる写真を見て

一番の「売り」は、コーヒーでもコーヒー以外のドリンクも定番メニューに加えている

2. 既存の顧客にもっと多く、もっと頻繁に購入してもらう

広告キャンペーンを展開するのではなく、顧客の目に触れる宣伝活動を絶えず行うことで、一度来店した顧客が何度も足を運ぶようになる

3. 価格を高めに設定する

プロモーション活動(イベント)費や、カスタマーエクスペリエンスを向上させる

マーケティングプランの採否を決める4つのチェックポイント

  1. 顧客の知的好奇心や判断力を尊重しているか
  2. お客様に約束した内容を企業として責任を持って果たすことができるか
  3. 従業員(パート)が楽しんで積極的にできるか
  4. 気が利いていて、オリジナリティがあり、心から信頼できるものだとお客様が受け取ってくれるか

3つ以上の「イエス」でブランド資産、3つ未満の「ノー」でブランド負債となる

「最大(規模拡大)」より「最高」

スタバは、「最大」のコーヒー企業になることに重きを置いたことはなく、「最高」のコーヒー企業になることを目標としてきた。
最高になるから、結果として規模が大きくなる。

スタバの最高のマーケティングは出店すること。出店自体が最大の広告。

  • 目立つロケーション(店舗拡大に一番お金をかけた)
  • テイスティングサービス
  • 口コミ

人々の感情という殻を破り、心に入り込むためには、地道なコミュニケーション活動が必要。押しつけがましくなってはいけない。

「体験」にお金を払っている

お客様は「体験」にお金を払っているので、商品を宣伝するときは「機能」ではなく「特徴」を、さらには「特徴」から得られる「効用」を伝えることに専念している。

暗黙の6つのマーケティングルール

  1. 誠実で信頼できる(お客様には誠実であり続ける)
  2. 気分を喚起する(押しつけはダメ。説教じみた決まり文句ではなく、場所・心地よさ・訴える内容をイメージさせるものでなければならない)
    成功例)「私に言わせれば・・・」
  3. 他社については一切触れない
  4. 従業員(パート)のコミットメントを高める
    従業員を尊重しないプラン、自分には関係がないと感じるプランは、お客様も同じように感じるに違いない
  5. 約束したことを必ず守る(たとえばメニュー写真は実際に提供するものと同等の写真にする。誇張された写真はNG)
  6. 消費者の知的好奇心や判断力を尊重(興味を持ってもらえる深い存在になる)

グッズ展開するときの指針

  1. 商品・サービスと同質なものである
  2. カスタマーエクスペリエンスに直接関係している
  3. さまざまな工夫や、独自のスタイルを加え、他にはない優れた品にできるものである
  4. さまざまなチャネルで入手可能にできるものである
  5. 店内、自宅、職場、仕事中、「値打ちあるひととき」を提供できるものである

メディア広告より口コミ

そのためにカスタマーエクスペリエンスにマーケティング資金の多くを充てる。肝心なのは「注目されたいなら、注目に値するものでなければならない」。
消費者のニーズではなく、ウォンツを満足させなければならない。

B. スターバックスのサービスに学ぶ

テレビ・ラジオ・印刷物やクーポン、インターネット広告、店内プロモーションよりも「口コミ」は非常に強力なマーケティングツール。
口コミはコントロールできないが、口コミを起こすきっかけを作ることはできる

商品の価値と口コミの評判は、どちらが欠けてもうまくいかない

スタバは「最高のコーヒーを味わうひととき(商品の価値)を提供している」という自負がある。消費者のニーズではなく、ウォンツを満たし、現実とウォンツのギャップを埋めている

ニーズしか満たさない企業は、必要最低限のみで、合理的で面白味がなく、商品の差別化はない。

ウォンツ(感情的)は、理想であり、ワクワクするもの、これを満たそうとする企業は注目に値する。

一般的なお客様サービスではなく、「語り継がれるような」お客様サービス。

語り継がれるための2つのモットー

  1. きっぱり「イエス」と言う
    お客様に「イエス」と言うと「無理なこと」ではなく「できること」に自然と意識が集中する。普通のサービスを越えるサービスを提供しようという温かい歓迎ムードが生まれる。
  2. 接する・気づく・対応する
    お客様が望んていることを、たとえそれが心の中の願望であっても、察知して対応することが、お客様と「接する」ことで、ウォンツに「気づき」、それに応じた「対応をする」と、お客様は笑顔になり、常連客となる。

お客様との約束を遂行するのは、誠実さのあらわれであり、お客様との信頼を築く上で欠かせない。だが、約束を果たすことだけではもはや充分とは言えない = 約束以上のことをする。
従業員に状況に応じて配慮できる分別と、小さいながらも意義深い判断をくだせる裁量権があれば、必要なときに、いつでも約束以上のことができる。
「そこまでやってくれたんですか!」と嬉しい驚きを告げられることこそが、約束以上のことをして得られる最高の報酬。

地域へ貢献する5つのビジネス効果

企業ミッションの一つに「地域社会や環境保護に積極的に貢献する」とあるが、地域へ貢献する理由は、地域の「反発」を抑えるためと5つの点でのビジネス効果がある。

  1. 地域活動に参加すると、充実感が得られ、仕事への熱意が高まる
  2. 離職率と地域活動への参加には相関関係がある
  3. 地域活動への参加は自然とリーダーシップという貴重な能力が身に付く
  4. その地域に対する気遣いのあらわれとなり、その地域の一員として認められ信頼されるようになり、会社の評判を高める
  5. 世評が高まると新規顧客や投資家が増え、販売増加につながる

スタバのカスタマーが満足する一番の条件は、上質なコーヒー、迅速なサービス、適切な価格ではなく、親切な従業員と清潔な店舗という、人と触れ合う要素にある。

サービスとテクノロジー

サービスにおいて、テクノロジー導入の判断基準は「カスタマーエクスペリエンスが向上するか否か」。「ふれあい」がテクノロジーに優るケースもあり、効率化がすべてではない。とにかく、常に「人ありき」

スタバは、人を相手にしたビジネスとしてコーヒーを提供する会社であって、コーヒービジネスを通じて人に奉仕する会社ではない。

なぜテイスティングを行うのか

  • テイスティングが最も効率的な販促ツールとなる
  • 言葉だけで伝えるのではなく、しっかり実感してください、という自信と誇りを伝えている(惜しみなく与える)
  • チェーン店特有のよそよそしさを消す

「お客様主導型テイスティング」より「店主導型テイスティング」のほうが、圧倒的にいい結果を出している。

テイスティングは「どのように行うか」が重要

商品の渡し方、サービスを行う場所、提供する時間帯、商品の説明。

過去にスタバは、コーヒーだけではなくライフスタイル分野に進出して失敗したことがある(「我が家の良さを知るためには、我が家から離れてみて分かることもある」との見解を示す)。

旅行者は土産を持ち帰り、探検家は土産話を持ち帰る
お客様を日常に楽しみを求める探検家として扱う

スーパーマーケットの会員特典、航空会社のマイレージ、携帯電話の長期サービス契約、これらはすべて、顧客を集団として捉え、気を引くためには手段を問わず、ロイヤルカスタマーのレッテルを貼るために消費者に仕掛けた罠。

スタバはこうした罠ではなく、「日常のちょっとしたひととき」を提供し、お客様の心をつかむ。

店舗拡大において、独自の突飛さや個性を打ち出すのは困難。そこで、一貫性と利便性で勝負する。

C. スターバックスの人材育成

心から会社を信頼する会社の「伝道者」。
伝道者は、会社自体の良さ、会社の信条、会社のおかげでどう自分の人生の質が高まったかなどを周囲に話す。
会社に洗脳されることなく、自分で決めて従う
会社は目的を達成する手段ではなく、いい人生を勝ち取るための手段と考えている。

3つの目的意識と意義の要素

  1. ビジョンと運命の共有(カスタマーエクスペリエンスとは何か、それがなぜ大切かを説明する)
  2. 従業員同士の交流を深める
  3. 適材確保 / 迅速解雇
    向いている・・・会社と商品に対して情熱を持っている。雇われる前から会社のビジョンに賛同している
    向いていない・・・無気力な態度を取り、会社がやろうとしていることを信頼しない

商品を真似できるが、働く人々の真似はできない。
お客様との大事なつながりを作るのは従業員(パート)。

従業員には満足する権利がある。その一つが福利厚生。

店舗で働く従業員が企業の顔となる事業、彼らの一挙一動が人目につく事業では、尊敬の面でも、福利厚生の面でも、従業員を経営陣と同列に扱わないと意味がない。

What’s in it for me(そこから何が得られるか)
従業員を第一に考えるという理念

ミッション宣言を実行している?

https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2002-251.php

  • お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる
  • 事業運営上での不可欠な要素として多様性を受け入れる
  • コーヒーの調達や焙煎、新鮮なコーヒーの販売において、
    常に最高級のレベルを目指す
  • 顧客が心から満足するサービスを常に提供する
  • 地域社会や環境保護に積極的に貢献する
  • 将来の繁栄には利益性が不可欠であることを認識する

分かりやすく、目標がはっきりしていて、すぐに実行できる = 行動指針

一人ひとりが直接会社に意見や提案を行う「ミッションレビュー制度」

  • 熱意あるリーダーよりも熱意あるフォロワーを重んじる
    下につく者の意思と熱意で作られる。従業員に求めるなら、まずは自分が奉仕しなければならない
  • 他人のニーズとウォンツに奉仕する人はリーダーになれる素養がある
  • 奉仕型リーダーに必要なスキルは「共感」「傾聴」「誠実」の3つ

ミッションは反することが行われていると感じたら、どんな活動についてでも疑問を投げかける

返答するが、返答以上に「行動」で答えることが多い

意見に耳を傾けるだけでなく、意見について対応すると従業員に分かってもらえる

提案者には個人の功績とされる

採用時に確認する4つの資質

  1. 誠実さ
    誰からも好かれるので、周囲との信頼関係が生まれる。チームの中で貢献するようになり、心のこもったサービスをお客様に提供してくれる
  2. 真面目さ
    思いやりがあり、ささいなことにも注意を払う
  3. 知識欲
    質問を投げかけてくるかどうか
  4. 積極性
    面倒見がいい
    何かに参加したり、周囲と交流を図るために時間を割く

最終的に人を動かすのは、情熱

自己満足に陥るな
現状維持に抵抗せよ
うぬぼれを打ち砕け

  • 新しいことに朝鮮し、違った見方で物事を捉えると、現状のビジネスの上にあぐらをかいていられない
  • 保身に回らない企業は、他社が絶対に立ち入らない事業を試し、そして成功を勝ち取ることができる
  • うぬぼれは外的に消費者ニーズより内的なビジネスニーズを優先する

従業員がリスクを負い、大きな目標を抱き、成功の度合いに関係なく謙虚な姿勢を忘れなければ、どんな企業も生き残って行ける

ベテランと新人をつなぐ方法

  1. 解決策を与え、障害は与えない
    「わかった、でもそれは絶対うまくいかない。何年か前にやってみたからね」

    「わかった、ではその案についてもっと検討しないとね。以前にやったときはうまくいかなかったから」
  2. 先生になる
  3. まずは聞く。それから対応する
    「ミーティングで自分の意見を主張するようになるには6週間待て」
    既存の社内文化を尊重し、変革を唱える前に文化を学ぼうとする姿勢を示すことになるので、それが過ぎれば新人の信頼性が固まる段階に入る
  4. ベテランと交流を深める

会議の7つのルール

ミーティングや会議では、意見の相違を恐れるのではなく、歓迎する雰囲気を作り出すと、従業員は意思決定プロセスに積極的に参加できるようになる

  1. 明確な目標を定める
  2. 中心となっている議題に沿って進める
  3. 定刻に開始し、定刻に終了する
  4. 会議の進行役を決め、出席者にも明確な役割を与える
  5. 余計や気遣いや遠慮のない議論を行えるようにする
  6. 次のステップと責任を伝える
  7. 目標を完遂する