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ほんとの意味で「シンプル」とは?

D.A.ノーマンの書籍「複雑さと共に暮らす デザインの挑戦」の本文内のテキストをほぼそのまま抜粋し、ポイントごとにまとめ直した(2011年10月に書いた記事「ほんとの意味で「シンプル」とは?」から移動してきました)。

「なぜ、テクノロジーは複雑か?」
「なぜ、ものごとはシンプルにならないのか?」

それは、人生が複雑だからだ。
機能を減らして複雑を減らすのは容易だが、シンプルを切望する一方、複雑を必要とするのが心理。
実際、モノをシンプルにすると売れなくなる。
選択できるときは、より多くのことをやれるものを選ぶ。その機能が複雑さの元になることを知っていても、シンプルより機能を取るのが心理。シンプルを望むが、すばらしい機能のどれ一つも失いたくはない。
生活の中では「複雑」は必要。

「複雑である」ことと「分かりにくい」ことは別。

「分かりにくい」ことは、悪いことだが、「複雑である」ことは、良くも悪くもない。
「複雑」を減らして「分かりやすく」ではなく、「複雑」を管理して扱いやすくするのがデザイン

テクノロジーを扱いやすくするのは心理的なもの

デザインを表現する前に理解しておくこと。

  • 文化間の視覚的な好みの違いを尊重する必要があり、一見したとこのろ複雑さは文化・経験によって異なる
  • 複雑さには好みの幅がある。
  • 簡単すぎるのは、退屈で深みがない。
  • 複雑すぎるのは、混乱させ、腹立たしい。
  • 人は中間的な複雑さを好む。その上、好みの幅は知識と経験によって変わる。
  • 複雑なものも使いやすいことがある。
  • 簡単なものも分かりにくいことがある。
  • ときに複雑さを好み、ときに簡単さを望む。

テクノロジーを扱いやすくするのは身体的タスクではなく、心理的なものである。

知覚されるシンプルと使用上(操作上)のシンプルとは別。

シンプルは、理解と強く結びついた心的状態である。
モノはその動き、選択肢、外見が知覚する人の概念モデルに合っているとき、シンプルと知覚される。
ぱっと見、複雑そうでも、操作のシンプルが最適化されれば、知覚されるシンプルも増す。

「複雑」さへの対処は誰が?ユーザー?開発者?

これは、誰の視点でシンプルであるかを測るかよって異なる。
結局、シンプルであるかは心の問題。
複雑なものも、それに熟達し、操作法とインタラクションの規則を理解すれば、シンプルになる。
ユーザーと開発者のパートナーシップを通して、複雑さを扱えるようにできる。

「複雑」を管理して扱いやすくする2つの理解

  1. 一度習得したらすべてに合点がいく基礎、根本となる論理「概念モデル」
  2. 能力とスキル

「概念モデル」は人の心の中にある。

「概念モデル」とは、複雑な物理的実体を、利用可能な理解できる頭の中の概念に変換する助け。
ただし、良い概念モデルがなくても、簡単な説明や他の真似をすることで、機器を使うことができる。
「分かりにくい」とは、適切な概念モデルがないこと。
この適切な概念モデルを与えることが良いデザインと成り得る。

良いデザインとは?

主に見た目
機能と操作、基本的なニーズを満たすこと、ポジティブで快適な体験
良いインタラクション、すなわち適切なコミュニケーション

重要な三種類の知識状態

現在の知識
今何が起こっているか、ゴールと出発点から見て今どこにいるのか、どんな行動が今可能なのかを知る。
過去の知識
どのようにして現在の状態に達したかを知る。
未来の知識
何を期待するかを知る。

基本的なデザインの規則の一つ

エラーメッセージを避ける。
どのように動くかに関する充分な情報を提示して、何かがうまくいかないとき、問題の証拠が知覚で、可能な代替案(過去の情報、現在の情報、未来の 情報)があることを示す必要がある。
どのように動くかに関する情報が不足し、何かがうまくいかないとき、間違いだと警告する代わりに、その場で直ちに修復するために必要なツールと共に問題の説明を示す。
これでよりシンプルになる。

複雑さを扱う二種類の基本原則

  1. デザイナーのための規則 -複雑さを扱いやすくする-
  2. 対処のための規則 -我々のための規則、複雑さに対処する-

1.デザイナーのための規則 -複雑さを扱いやすくする-

デザインの道具
概念モデル、シグニファイア、組織化された構造、モジュール化、自動化
学習の道具
マニュアル、ヘルプシステム

概念モデル

デザインへの強力な含意を持つ昔からの戦略「分割して統治せよ」。
グループ化して分類することにより複雑さを理解できる構造を得られる。
ただし、デザインの基本的要件は、モノを理解可能にすることだが、そうした優れた概念モデルだけではダメ。適切にコミュニケーションが 行われないと役に立たない。

「社交的なデザイン」
場所を孤立することによって、社会的なインタラクションを最大化している。
機会を減らせば、集中と深さが増す。
理解こそが、複雑なシステムをシンプルに変換する決め手。
機会もサービスも、デザインは社会的な活動と捉えるべきで、その活動がうまく完了するように、インタラクションの社会的性質に充分配慮されるべき。
製品デザインはかなり考慮されるようになったが、サービスデザインの研究はまだ生まれたばかり。
サービスは製品のように魅力的ではない。多くの場合、何も見えるものがない。
サービスデザインは手段であって、行動で分析されなければならない。

シグニファイア

(意図的であるかは関係なく)適切な行動への知覚可能なサインのこと。
似た概念に「アフォーダンス(生体の持つ可能性とモノの持つ可能性との間の関係性であり、実世界に存在し、行動を可能にする世界の一部)」という 概念がある。
×「製品にアフォーダンスを追加した」
○「製品のアフォーダンスを明確にするため、シグニファイアを追加した」

構造

シンプルにする方法

構造を与える。
ひとつひとつが学びやすい、取り扱いやすいモジュールへとタスクを構造化する。
再概念化する。
問題を今までとは違う枠組みで見ること。
例)テレビ番組を録画する際
「日付と時間、チャンネルを設定」して録画するのではなく、「番組名を設定」
して録画する。
強制選択機能
好ましくない行動を防止するための制約(負のシグニファイア)。
余分な行動を防ぎ、安全上の価値ある補助。
デフォルトとナッジ(軽いひと押し)
デフォルトを使うことはシンプル。
ただし、デフォルトが望ましいのはその選択に同意するときのみ。

モジュール化 – 分割統治 –

よくデザインされた複合機
娯楽システム
各機器ごとにリモコンがあり、煩雑した場合

一つの製品で複数の装置を制御できる「ユニバーサル」な操作機能を与えようとする。

知覚された複雑性と実際の複雑性を増やすだけ。

活動中心にする(活動を選び、それに最適化した項目を表示する)
実際の要求をモデル化したため、適切にモジュール化されシンプル。

自動化

シンプルにするにはもっとも有効だが、頑健で信頼できるシステムによって、機能が完全に自動化された場合に限る。
自動化が破綻すると、自動化されなかったときより、タスクは複雑になる。
部分的な自動化も完全な自動化や自動化なしに比べて、切り替える際の混乱と複雑さから問題が多い。

学習の補助

マニュアルは、ほとんどの人が「ジャストインタイム」の学びを望んでいる。
マニュアルはすばやく効率的な教示素材として用意する。
短いデモにチュートリアル、そして最後に、より進んだ知識を求める人のために、すべての機能とオプションの趣旨に関する完璧な記述をできるだけイ ラスト付きで用意する。

2.対処のための規則 -我々のための規則、複雑さに対処する-

受け入れよ
複雑さを受け入れることを学び、それを克服することも学ぶ。
複雑なものも、ひとたび適切に扱い、小部分に分割して、それぞれを比較的克服しやすくし、理解し、システムに組み込まれている手がかりを見つけて用いたとき、シンプルになる。
分割統治せよ
タスクを理解可能なモジュールに分割し、一つずつ学ぼう。
達成感が得られ、次を学ぶ動機付けになる。
ジャストインタイムで学べ
理解せよ、記憶はするな
他の人をよく見よ
実世界の知識を使え
シグニファイア、アフォーダンス、制約、サイン、ラベル、マーカー、リスト

待つことのデザイン(待ち行列の6つのデザイン原理)

  1. 概念モデルを提供する
  2. 待つことが適切であると受け取れるようにする
  3. 期待に応える、あるいはそれを上回って応える
  4. 人々の心をとらえておく
  5. 公平である
  6. 終わりと始まりを強調する

1.概念モデルを提供する

対処しているという確証と安心感を与えることによって、不安を最小限にする。
そのためには、良い概念モデル(これから何が起こるのかを示し、今何が起こっているのかを理解する助け)が必要。
そのためには、充分なフィードバックが必要。たとえ原因不明でも「原因が分からない」という説明で適切な人が問題を認識し、対処しているところだ ということが分かり、安心を与える。

2.待つことが適切であると受け取れるようにする

なにが起こっているのかの情報と概念モデルの組み合わせがうまくいくとき、適切だと受け止められる。

3.期待に応える、あるいはそれを上回って応える

適切な行動を提案し、時間はつねに長く見積もらなければならない。
嫌なものだという事実は、それをより良いものにする何かを見つけようとするきっかけになる。

4.人々の心をとらえておく

物理量と心理量の違いを理解する。
そのときに知覚された時間や距離と、後で記憶に残っているものと間には大きな差異がある。
何かの経験をしているときには、何もすることがない時間はやることが詰まった時間よりも長いと知覚される。しかし後で思い出す と、やることがなかった時間はあった時間よりも短かったと知覚される。

5.公平である

待つことが理にかなっているように見え、誰に対しても不満がない状態が、無秩序だったり、不公平だと感じた瞬間、強い負の情動 がわき起こる。

6.終わりと始まりを強調する

常に前向きな終わり方をすること。心理学の研究「系列位置効果」によれば、列の終わりに来たとき、列に付いたとき、中ごろにい るとき、という順番で記憶に影響を与える。
終わりと始まりを強調し、避けられない不愉快な場面を中ごろに埋め込むことが、基本的デザイン原則を強化する。

番外1

顧客に提供する新機能を加えたい誘惑があり、それは複雑さが増すコストもある。

レンタルサービス業ネットフリック社にみる例
  1. 新機能を追加
  2. 価値より複雑さを増してしまったと判断し、新機能停止
  3. 顧客による反対意見続出
  4. 機能復活
  5. 顧客満足度向上

間違ったことをきちんと正した会社は、間違いをまったく犯したことのない会社よりも好まれる(現在の研究ではあまり支持されていないが実例とし て)。いずれにせよ、いかに顧客のことを気にかけ、行動することが重要。
誠意、正直さ、個人的な配慮は大きい影響力を持つ。

番外2

人の振る舞いは、一見簡単そうに見えて複雑(社会的な振る舞いはなおさら)。
人の振る舞いに合うようにデザインするべきであって、思い通りに振る舞わせるようにではない。
使っているモノが、可視性、ナッジ(軽いひと押し)、シグニファイア、機能の強制、フィードバックを備えたときに、うまく機能する。
現状のままでは、私たちがテクノロジーに合わせなければならない。
今こそテクノロジーが我々に合わせるように変革するとき。
デザインのコンセプト。それは、人間の立場に立ち戻り、従順なシステム、寛容なシステムを目指すことを求めることだ。
(Norman 2009a)
この考えを適用したクライアントは、これを「エモーショナルデザイン」と呼んだ。

最後に

複雑さに対する強烈な反対派であり、シンプルを強く主張してきた。
しかし、問題は複雑さでなく、分かりにくさとその結果生まれる矛盾。
その解決方法は、制御・表示・機能を少なくするのではなく、一貫性と理解である。

  • 「シンプル」から「複雑さとの共生」へ
  • 「アフォーダンス」から「シグニファイア」へ

読んだ感想

あえて言おう。
これからは、エモーショナルデザイン、だ。